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『ユナイテッド93』

エンタテインメントを期待する方にはおすすめしない。
ポップコーンとコーラを両手に席に着くのがその日のお楽しみならば、
どうか隣のスクリーンへ行っていただきたい。お願いだから。

5年という月日が十分なのかどうかは、それぞれが決めればいい。
あの日の出来事とその日からのしばらくに自失してしまった私には、
覚悟はしていて、やはりまだ早すぎたけれど、
それでもどうしてもスクリーンで観たかった。
今年の911を迎える前に。

あの日犠牲になった4機のうち、
ただ1機だけが目標に到達しなかった。
ユナイテッド93便。
その機に日本人大学生も搭乗していたことを、
私は知らずにいたのか失念していたのか。

映画という手段だけれど、体感と呼ぶ方が似つかわしい、それは衝撃だ。
まるでドキュメンタリーを観ているようだと評したメディアが多数あるが、
確かに命の記録と呼んでもいいのかもしれない。
私はエンドロールが終わっても席を立つことが出来なかった。
苦しくて泣きじゃくっていた。
悲しかったのか悔しかったのか誇らしかったのか。
ただ命を思った。強く。

ほとんど全てのご遺族の協力を得て、
この映画は製作されたのだという。
ひとすじの光を見い出すにはあまりにも過酷だ。
けれど、起こってしまった事実を懸命に受け止めようとする人たちがいる。
真摯なまでの敬意と慈愛に満ちた鎮魂歌。

実行犯である4人に無駄な台詞は語らせず、
それがこの作品の質を高め、製作に対する誠意を感じさせる大切なポイントだと思う。
彼らもまた神だけを信じた命であったことを忘れてはいけない。
だからこそ、忘れてはいけないのだと思う。
今の私に出来ることは「忘れない」ことだけだ。

この映画の製作に携わったすべての人に敬意を表したい。

上映前、今秋公開予定の『ワールド・トレード・センター』の特報が流れた。
まだ私には正視出来そうにない。
警鐘は鳴り続ける。
by maylee127 | 2006-09-07 22:03 | movie&おうちmovie&drama
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